心の病の成り立ちと実際|JR上野芝駅すぐの心療内科・精神科・児童精神科-上野芝ひとみメンタルクリニック

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心の病の成り立ちと実際

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心の病の成り立ちと実際

心の悩みの成り立ち

心の悩みは気分、意欲、自我、行動といったあらゆる心の働きの面に現れてくる。健康な状態であれば自分でコントロールできるが、悩みが大きくなり、その背景にストレスなどがあると心の不健康な状態から心の病気に発展する。
気分の変化についてはうつ状態(うつ病エピソード)と躁状態(躁病エピソード)がある。うつ状態になると、憂うつな気分になり、先の見えない不安に支配され、意欲がなくなり、さらにそれは自我の働きにまで影響が及ぶ。自信がなくなり自分を無価値と考えるようになり、絶望的な考えにとらわれる。このまま消えてしまいたい、人生をこのまま終わりたいという心境にまで追い詰められる。それに伴ってさまざまな身体の不調を自覚するようになる。躁状態になると反対に、気分は爽快になり機嫌が良くなり自信過剰となり物事に楽観的になる。そして自己感情が肥大して尊大になり対人関係でトラブルを引き起こすようになる。不安な気分にとらわれると心配性になり、些細な出来事が恐ろしくなりそこから逃げ出したい思いにとらわれる。症状は精神面だけでなく身体面にも表れドキドキして落着かず息苦しくなり、口が乾き、身体が震え、汗をかくようになり、助けてほしいと叫びたい心境になる。
 自我の働きが不調になると「わたしはわたしである」「わたしは存在している」「わたしが行動している」「わたしと他人は違う」という働きに変化が起きてくる。離人症という状態である。さらに自我の働きが失われると「わたしが行為している」という実感がなくなり、ついには他人から「させられている」という体験を抱くまでになる。「させられ体験」である。離人症は非特異的な状態でありストレス反応、外傷後ストレス障害、解離性障害、人格障害などさまざまな状態で見られるが、「させられ体験」は統合失調症においてきわめて重要な症状である。

心の悩みの症状

 以下によくみられる心の病を紹介する。社交不安症(社交恐怖)とは社交場面において抱く著しい恐怖または不安であり、知らない人に会うこと、見られること、他者の前で行動することを恐れ、それを回避するようになる。恐怖症・強迫性障害とはさまざまな思考、衝動のイメージに対する強い不安や苦痛であり、それを無視しようとしても容易に頭から去ってくれない。そのため手を洗う、順番に並べる、確認するなどの行動を繰り返すようになる。そのために日常生活の多くの時間と労力が消費される。この心の病のグループには、他人が気づかないような外見上の欠点にとらわれるという醜形恐怖症、物の価値に関係なく所有物を捨てることができないという「ためこみ症」、抜毛症、皮膚むしり症などが含まれる。
適応障害はストレスの始まりから3カ月以内に気分や行動面に症状が現れてくる。それはストレスに不釣り合いな苦痛を伴っており、社会的、職業的機能の障害を引き起こす。抑うつ気分が優勢にみられるもの、不安が優勢にみられるもの、不安と抑うつ気分の混合が優勢にみられるもの、素行の障害が優勢にみられるものなどがある。心的外傷後ストレス障害では危うく死ぬような重傷を負う、あるいは性的暴力を受けるような出来事を直接体験し、あるいはそれを目撃することなどにより、苦痛な記憶がその後も心の中に繰り返されるという侵入体験、出来事が再び起こっているように感じる「フラッシュバック」などが見られる。そしてそのような苦痛な記憶、感情を回避しようとする。激しい憤り、いらだたしさ、無謀な行動、過度の警戒心、集中困難、睡眠障害などがみられる。
病気不安症では健康への懸念に関係して自己の身体症状に対する過度な思考、感情が見られる。重い病気に罹っているのではないかという強い不安にとらわれ、身体症状はごく軽微であるにもかかわらず繰り返し病院を受診して検査を求める。ドクターショッピングである。特に痛みが身体症状の中心であると疼痛性障害と呼ぶ。
注意欠陥多動症では学業や仕事に注意を集中することができない、注意を持続することが難しい、手足をそわそわ動かしている、しばしば席を離れる、しゃべりすぎる、他人との会話やゲームに干渉するなどの症状が認められ、まるでエンジンで動かされているようである。自閉スペクトラム症では対人関係において通常の会話のやりとりができない、視線を合わせることができない、行動や興味が限定されている、行動様式を変えることができないなどのために、社会的コミュニケーションが取れなくなる。
認知症では脳の器質的障害によりいったん発達した脳の機能が低下する。日付、時間、場所がわからなくなる、物事の段取りがわからなくなる、経験したことの一部、または全体を忘れてしまうなどの症状が見られる。以前は痴呆と言われていた。アルツハイマー型認知症、脳血管性認知症、レビー小体型認知症などに分けられる。